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大阪家庭裁判所 昭和56年(家)4317号 審判 1982年4月14日

申立人 上川茂代こと朴文南

精神障害者 上川多喜夫こと趙尚徳

主文

本件申立を却下する。

理由

一  本件は上記精神障害者につき保護義務者を選任されたい旨申立てるものであるが当庁家庭裁判所調査官○○○○の調査結果によれば申立人は上記精神障害者の母で、同人を含め亡夫との間に六人の子があるがうち一人は永年所在不明でその他はいずれもが酒精中毒者あるいは肺結核患者その他で入院中あるいは自宅療養中等で生活保護をうけている状況であり、また申立人自身も現在八〇歳を超える老令で心身ともに衰弱し、いわゆるボケてしまつて子らのことについても殆んど知らないか思い出せない様子である。本件申立についても福祉事務所の指導によつて事情をよく理解せぬまま申立人が手続をなしたものとみられ、いずれにしても本件では申立人を含め他のいずれを求めても精神障害者の保護義務者に適任の者は存在しないことが認められる。

二  かような場合は精神衛生法二一条により精神障害者の居住地の市町村長が保護義務者となる旨定められているのであつて、現実にその規定を発動された場合事務手続が繁雑で時日を要するため福祉関係等の現場事務担当者としては労苦を伴うことであろうが、さりとて保護義務者には保護義務者としての諸種の権利義務が伴うものであるからこれを理解し遂行するに足る資力も能力もない者にこれを課すことは適当でないのであつて本件事案のような場合はやはり法の定めるとおり市町村長にその任を委ねるのを相当と認める。

三  よつて、本件申立は却下するほかないので主文のとおり審判する。

(家事審判官 岩川清)

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